「ねぇ、空を飛ぶって自由でいいよね。羨ましい」
「…なんでそう思うの?」
「え?なんでって?」
「それが普通なの?」
「うーん…みんなが空を飛べないから、きっとそうかもしれないな」
「ふーん…よくわからないなぁ…」
「飛行機とかじゃなくて、自分の羽で飛んでみたいんだ」
「…あげようか?」
「え?」
「僕の羽。これで君も空を飛べるよ」
「本当に!?僕でも空を飛べるの?」
「うん。君がそんなに欲しいっていうなら」
「うん!すっごく嬉しい!」
「そう、じゃあ、少しだけ目を瞑ってて。羽は少し重たいかもしれないけどすぐに終わるから」
―パチン
「どう?」
「わぁ!本当だ!僕の羽だ!これで空を飛べるんだ!」
「ふふ、よかった」
「すごい!僕、飛んでる!飛べてるんだ!」
「よかったね、それじゃあ僕にもちょうだい」
「?うん、いいよ、好きなものをあげる。君はこんなにすばらしいものをくれたんだから!」
「…それじゃあ、これ、もらうね」
―ズバッ
「うわあぁぁ!」
「だって君はもう飛べるんだろう?だったらいらないじゃない?だから、僕にちょうだい?」
「あ、ああ、うああ、痛い、痛いよぅ」
「僕は空を捨てた。君は大地を捨てた。ほら、ちょうどいいよね?」
「ど、どうして…」
「君が空ばかり見ているから、足元にある石に気付かなかっただけさ」
「返して!羽根なんかいらないから僕の足を返して!」
「なんでさ、空を飛べて自由になれたんだろ?」
「こんなの、こんなの自由じゃない!」
「自由?知らないよ。僕は君が欲しいものをあげただけ。さぁ、もう行かなくちゃ」
―バサッ
「え、その羽…なんで?」
「僕の羽はひとつじゃない。それだけのことさ」
「ま、まって!」
「自由になれてよかったね。それじゃあね」
―バサッ、バサッ
「まって、まってよ…う、うわああぁぁぁ!」