創楽 友原周SS集

ShortShort

嘘は優しくて残酷なもの

「浮かない顔をしてるね、どうしたの?」
「…喧嘩したんだ、母さんと」
「おや、それは大変だ。どうして喧嘩になってしまったの?」
「わからない。今となっては何で怒ってるかなんてわからないよ」
「それじゃあ、どうしてそんな顔してるの?」
「僕は嘘が嫌いなんだ。母さんは僕と口喧嘩になると、決まって嘘をつく」
「へぇ、なんて?」
「"お前に母さんの気持ちはわからないよね。本当は貰われてきた子なんだから"」
「ふうん?」
「子供じみた嘘ってわかってる。けれど、嘘はよくないって僕に教えたのは母さんなんだ。
だから僕は嘘が嫌い」
「どんな嘘でも?」
「どんな嘘でも。嘘をつく事自体が嫌いなんだ。別に悪いことじゃないだろう?
嘘が悪いんだから」
「うーん、僕には何ともいえないな」
「僕にそう教えた本人がまず嘘をついてる。それが腹立つんだ。僕が嘘を嫌いなことを言っててあんな事言うんだ」
「なるほどね…」
「きっと僕の気分が悪いのも、その嘘の所為。まったく、嘘には本当にいいところがない」
「そんなに言うなら、僕が直してあげる」
「え?どういうこと?」
「嘘が嫌いなのは良くわかったよ。君も今みたいな気分でずっといるのは嫌だろう?」
「それはそうだよ。好きで怒ってるわけじゃない」
「なら、僕に任せて。君のそのいらいら、解決してあげる」
―パチン
「…?何をしたんだい?」
「ふふっ、僕の秘密のおまじないみたいなものさ。これで君が怒ってることはなくなったよ」
「うん?何も変わらない様に見えるよ?」
「すぐにわかるよ。…それじゃあ、僕はもう行くね。ばいばい」
―バサッ、バサッ
「うーん?何が起こったんだろう?」
―コンコン
「いるの?入るわよ?」
「…はーい」
―ガチャ
「やっぱり、何も変わらない。母さんは母さんだ」
「何を言っているの?夢でも見ていたの?」
「まさか、違うよ。うん、なんでもないよ。ところで何?」
「そう、あなたにお話しなくちゃいけないことがたった今出来たの」
「話って?」
「あなたの、本当のお父さんとお母さんが迎えに来たのよ!」
「…え?」

ページの先頭へ