創楽 友原周SS集

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世の中は、つまらないことの集合体

「私ね、退屈ということが嫌いなの。どうしてそんなものあるのかしら」
「君は何に退屈しているの?」
「つまらない授業や嫌いな先生のために、どうして学校に行かなきゃならないの?友達と喋るのは好きだけど」
「あとは?」
「掃除でしょ、良く本を読むようにと言われるけれど、文字ばかりは楽しくないから読書も嫌い」
「でも漫画、さっきまで読んでたよね?」
「綺麗な絵があると面白いじゃない?文字だけより、世の中の本全部を漫画にしたらいいのに」
「つまらないことが本当に嫌いなんだね」
「みんな楽しい思いをしたいから遊びに行ったりするでしょう?それなら、つまらない事を無くすほうが簡単じゃない?」
「つまり、世の中がずっと面白くて、楽しければいい?」
「そうよ。そのほうがいいに決まってる。楽しいことよりつまらない事が好きな人なんていないわ」
「なるほど。面白い考えだ。僕も楽しいほうが好きだな」
「でしょ?」
「君はさっき、つまらないと言ったよね。僕に出来ることでいいなら、君をつまらない思いをさせないことならできるよ」
「え、本当に!?そんな生活ができるの!?」
「どう思うかは君次第だけど、自信はあるよ。方法が二つあるんだけれども、"しばらく"と
"ずっと"、どっちがいい?」
「嬉しい!やっぱりあなたに話してよかった!退屈なんて真っ平!両方体験したいから
まずは"しばらく"がいいわ!」
「そう。眼を閉じて。すぐに終わるから」
―ふっ
「?何か変わったかしら?」
「そこの本を開いてごらん」
「え?…わぁ、教科書が全部絵になってる。これなら面白いわ!」
―ぱらぱら ぱらぱら
―ぱらぱら ぱらぱら
「どうしたの?」
「最初はおもしろかったの。でも、全部これだと飽きて、つまらなくなっちゃったわ。ねぇ」
「"ずっと"をやりたいの?」
「それを言おうと思っていたの!お願いできる?」
「うん、いいよ。そのために、君から貰わなきゃいけないものがあるんだけれど、いい?」
「?ええ。何をあげればいいの?」
「これさ」
―ドスッ
「…え」
「これで、ずっとつまらない思いはしなくてすむよ。よかったね」
「どうし…て…」
「君が楽しいと思うことなんて知らないよ。楽しいや面白いは比較対象があって初めてわかるものさ」
「こんなの…楽しく…ない、わ…」
「僕は君を楽しませるとは言ってないよ。嘘はついてないだろう?まぁ…」
「…。」
「つまらない以外もわからなくなるのが欠点なんだけど、ね」

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