創楽 彩SS

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カルボナーラ

  冷蔵庫を開けて100%グレープジュースを取り出す。甘みと渋みのバランスがたまらない。
  以前は、フルーツジュースなんてほとんど飲まなかった。特にオレンジジュースの、飲むとしばらく胃の中でムカムカする感じが苦手だった。飲むとしたらもっぱら、りんごジュースと決めていた。一番はずれが少ないからだ。
  いつだったか、イギリスに2週間ほど旅行した際、毎朝100%フレッシュオレンジジュースが出てきた。それが思いのほか美味しかったのだ。それから、好きになった。他の物にも手を出すようになった。今のお気に入りは、ミニッツメイドのグレープジュースである。
  出されたものには必ず手をつける。出来る限り残さない。その性格に感謝した。

  昨日の喧嘩を思い出していた。もっとも、相手にとっては喧嘩ですらなかったのかもしれない。いつもそう。あまりにも一方的過ぎて、彼の大人さ加減には脱帽を通り越して呆れてしまう。
  きっかけは些細なことだった。どちらが悪いというわけではない。彼が望んでいたことと、彼に望んでいることの相違。
  女の子は大切にされるべきなのである。子という歳でもないというつっこみにはこの際眼を瞑るとして、それが、彼の意見を受け入れられない要因のひとつだ。結果、自我を押し付けるかたちになってしまう。それを、彼がわかったようなふりをするからややこしくなる。本当は何ひとつ、納得なんかしていないくせに。

  顔を洗い、着替えて化粧をする。制服が会社のロッカーに置いてある。バイクに乗るため、いつもジーパンしか穿かない。それにしても、女性ライダーはいつも化粧をどうしているのだろうと思う。仕方がないので、仕上げは会社ですることにしている。
  いつもと同じ時間に部屋を出る。晩御飯は彼の好物を作ろう。

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